NATOとロシアの不和な関係 -

NATOとロシアの関係は深刻な危機に陥っている。ウクライナの戦場で核兵器を使用するというウラジーミル・プーチン大統領の脅しはNATOにとって非常に深刻であり、NATOはロシアの無責任な核発言と威圧的な核シグナルを非難している。実はかつては友好的だった北大西洋条約機構とロシア連邦の関係は、冷戦の暗黒時代以来最低の状態にある。NATOの指導者たちはロシアがNATOに直接の脅威を与えていると考えているが、彼らの集団的な非難はモスクワでは無視されている。

では、以前は建設的だったNATOとロシアの関係がなぜこれほどまでに不和に変わってしまったのか？このギャラリーをクリックして、ロシアがNATOと仲違いした理由について詳しく調べてみよう。

© Shutterstock

ブリュッセル条約 -

ブリュッセル条約は、第二次世界大戦の終結後にドイツやソ連の侵略の可能性を防ぐために1947年に作成されたダンケルク条約の拡大として、1948年3月17日に調印された。

© NL Beeld

北大西洋条約 -

1949年4月4日、西側諸国の指導者たちはワシントンD.C.に集まり、北大西洋条約に著名した。最高責任者は、この条約を「平和にとってマイナスではなくプラスの影響」と呼んだ。

© Getty Images

NATOの設立 -

北大西洋条約は、北大西洋条約機構（NATO）によって実施される。NATOは、ソ連に対する集団安全保障を提供するために設立された。

© Getty Images

朝鮮戦争とソ連の脅威 -

1950年6月、ソ連の支援を受けた北朝鮮が韓国に侵攻した。この紛争により、NATO加盟国は共産主義による政権奪取を恐れるようになった。

© Getty Images

ワルシャワ条約機構が結成される -

冷戦における重要な出来事は、1955年5月6日にドイツ連邦共和国がNATOに加盟した時に起こった。これはソ連と東ドイツにおけるソ連の立場に対する直接的な脅威とみなされた。この動きの結果、ソ連はポーランド、ハンガリー、チェコスロバキア、ブルガリア、ルーマニア、東ドイツ、アルバニアを含むライバルのワルシャワ条約機構を結成した。

© Getty Images

ベルリンの壁が建設される -

1961年のベルリンの壁の建設は、冷戦の緊張の高まりを示した。この時期に、ソ連の侵攻に対するNATOの防衛能力の信頼性に疑問が生じた。

© Getty Images

NATOと冷戦 -

冷戦中、NATOは集団防衛と、ソ連から生じる潜在的脅威から加盟国を守ることに重点を置いていた。キューバ危機の際のワシントンとモスクワの緊迫した対立は、冷戦が本格的な核戦争にエスカレートする最も近づいた出来事と広く考えられている。

© Getty Images 

冷戦の終結 -

1991年12月の冷戦の終結とソ連の崩壊は、ヨーロッパの歴史における転換点となった。1991年から、NATOはロシアとの戦略的パートナーシップを確立するために懸命に取り組み始めた。その結果、NATOとヨーロッパおよび中央アジアの非NATO諸国との関係改善を目的とした欧州・大西洋パートナーシップ理事会が設立された。

© Getty Images

平和のためのパートナーシップ -

ロシアは1994年に「平和のためのパートナーシップ」（PFP）に参加した。NATO主導のこの取り組みは、NATO加盟国と旧ソ連諸国を含む主に欧州諸国との信頼と協力関係の構築を目的としている。しかし、PFP加盟国は2014年にロシアがウクライナ領内のクリミア半島に侵攻した後、ロシアとのパートナーシップを停止した。

© Getty Images

NATO・ロシア基本議定書 -

1997年のNATO・ロシア基本議定書の調印では、双方が「民主主義と強調的安全保障の原則に基づき、欧州大西洋地域に永続的かつ包括的な平和を共に築く」こと、および人権と死因の自由を尊重することを決意した。重要なのは、ロシアがNATO同盟国および他のいかなる国に対しても脅迫や武力行使を行わないことを誓約したことだ。

© Getty Images

9/11の余波 -

米国で9月11日の同時多発テロが発生した後、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はジョージ・W・ブッシュ米大統領と連絡を取り、ワシントンと情報を共有した。これはアフガニスタン駐留米軍にとって極めて重要だった。NATO加盟国として、米国とロシアの新たな建設的な関係は、ロシアとNATOの関係に良い影響を与えるだろう。

© Getty Images

NATO・ロシア理事会 -

2002年、NATO・ロシア理事会（NRC）が結成された。NRCの構想は、少なくとも月に1回は大使レベルで、年に2回は国防相と外相レベルで会合し、共通の関心事項について話し合い、可能であれば共同行動を取るというものだった。

© Getty Images

NATOとロシアの協力 -

NRC協定は、NATOとロシアがアフガニスタンで相互支援に協力することを定めた。これには、同国で活動する国際治安支援部隊の通過ルートをロシアが提供し、アフガニスタン軍士官候補生を共同訓練することが含まれる。

© Getty Images

ジョージア危機 -

2008年8月にロシアがジョージアで軍事行動を起こし、NATO・ロシア理事会の公式会合と一部分野での協力が停止されたことで、NATOとロシアの以前は友好的だった関係は後退した。

© Getty Images

外交が勝利 -

2009年にストラスブールとケールで開催されたNATO首脳会議で、首脳らはジョージアをめぐってロシアとの違憲の相違を認めたが、現実的かつ政治的な協力を再開することを決定した。

© Getty Images

戦略的パートナーシップ -

翌年リスボンで行われた首脳会談で、NATO首脳とロシアのドミートリー・メドヴェージェフ大統領は「真の戦略的パートナーシップに向けた強力の新たな段階」に乗り出すことで合意した。

© Getty Images

ヴィジラント・スカイズ -

この新たな戦略的なパートナーシップにより、NATOとロシアは2011年に初の合同軍事演習を実施した。NATOとロシアの戦闘機が、9月11日の米国への攻撃などの防止を目的とした「Vigilant Skies（ヴィジラント・スカイズ：油断のない空の意）」というコード名で呼ばれる対テロ演習に飛び立った。

© Getty Images

合同軍事演習 -

その後数年間、海賊対処や潜水艦救助訓練を含む更なる合同軍事演習が行われた。

© Getty Images

クリミアへの侵攻 -

しかし、ロシアとのパートナーシップ構築に30年近く務めた後、NATOは2014年にウラジーミル・プーチン大統領がウクライナの領土の一部であるクリミアを違法に併合した後、モスクワとの協力を全面的に停止した。

© Getty Images

NATOとロシアの空中戦 -

2015年11月24日、あまり報道されていな事件だが、トルコ空軍のF-16戦闘機がシリア・トルコ国境付近でロシアのスホーイSu-24M攻撃機（写真の機体と類似）を撃墜した。

© Getty Images

冷戦の記憶 -

撃墜の重大さはNATO加盟国であるトルコや同盟国にとっても明らかだった。この事件は、1953年の朝鮮戦争中の水豊ダム爆撃以来、NATO加盟国によるロシアまたはソ連空軍の戦闘機の撃墜としては初めてのことだった。

© Public Domain

NATOの影響力の強化 -

ロシアがクリミアに不法に侵入したにもかかわらず、NATOは政治と軍事の連絡回路を開いたままにすることを選択した。しかし、2016年のワルシャワでの首脳会談で、同盟国はNATOの東部、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドでの軍事的影響力を強化することで合意した。予想通り、プーチン大統領はロシア国境付近でのNATOの軍事力増強を最大の軍事的脅威と宣言した。

© Getty Images

ソールズベリー神経剤事件 -

元ロシア軍将校で英国諜報機関の二重スパイだったセルゲイ・スクリパリを毒殺しようとして神経剤が使用されたことは、世界の注目を集めた。暗殺未遂事件はイギリスのソールズベリーで発生し、スクリパリの娘ユリアも標的となった。2人とも生き延びた。プーチン大統領は直接この攻撃に関与したとされ、NATO同盟国は深い懸念を表明し、この国際規範違反は容認できないと非難した。

© Getty Images

ロシアの侵略を非難 -

2019年にロンドンで行われた会合で、NATO首脳らはクリミアにおけるロシアの攻撃的な行動を改めて非難し、それが欧州大西洋の安全保障に対する脅威であると宣言した。しかし、連絡回路は依然として開かれたままであった。

© Getty Images

ロシアがウクライナに侵攻 -

2022年2月のロシアによるウクライナへの全面侵攻を受けて、NATOとロシアの関係は冷戦以来最低に落ち込んだ。プーチン大統領はNATO・ロシア設立条約を事実上破棄し、同盟国はロシアの軍事力から資源を奪うためにロシアに厳しい制裁を課し始めた。

© Getty Images

トランプのNATOに対する問題 -

ドナルド・トランプは長年NATOを批判しており、その意見は物議を醸すこともある。2024年2月の大統領選挙集会でトランプは、十分な防衛費を支出しないNATO同盟国に対してロシアが「やりたい放題」することを「奨励する」と述べた。当時のNATO事務総長イェンス・ストルテンベルグは、その発言は「米国を含む我々の安全保障全体を弱体化させる」と述べた。しかし、トランプはNATO加盟国に対するロシアの攻撃を促すとまでは示唆していない。

© Getty Images

フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟 -

2023年4月4日、スウェーデンのNATO加盟に続き、フィンランドも正式加盟国となった。両国は、ウクライナ侵攻後のロシアに対する安全保障上の懸念が高まる中、NATOへの加盟を選択した。その結果、NATOとロシアの陸上国境は2倍以上に拡大したが、ロシアの陸上国境のわずか11％がNATO諸国と共有されているだけである。それでも、プーチン大統領がNATOがロシアを包囲しようとしていると非難するには十分だった。

© Getty Images

ウクライナはNATO加盟を目指す -

2024年のワシントンサミットで、NATO加盟国は、ウクライナの将来はNATOにあると再確認し、NATO加盟を含む欧州大西洋統合への不可逆的な道を歩むウクライナを今後も支援していくと表明した。しかし、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は正式な招待状を受け取っておらず、戦争が終わるまでは招待状が発行される可能性は低い。

© Getty Images

ロシアの核攻撃の閾値が引き下げられる -

一方、退任するバイデン政権が最近、ロシア国内の標的を攻撃するためのウクライナの長距離ミサイル使用禁止を撤回したことを受け、プーチン大統領はロシアの核政策の改正法に署名し、核兵器使用の敷居を下げた。その後ロシアは、明らかに新しい核搭載可能な中距離ミサイル「オレシュニク」でウクライナを攻撃した。

© Getty Images

ロシアはNATOの安全保障に対する直接の脅威 -

NATO事務総長マーク・ルッテは、ロシア連邦は同盟国の安全保障に対する最も重大かつ直接的な脅威であると警告し、プーチン大統領はウクライナを「試作ミサイルの実験場」として利用し、この違法な戦争に北朝鮮の兵士を派遣している、と付け加えた。

出典: (NATO) (Politico) (ABC News) (CNN) (Reuters)

© Getty Images