脳卒中は世界第3位の死因である
ウィルソン病は体内に銅が過剰に蓄積する先天性の疾患である。ATP7B遺伝子の突然変異によって起こり、脳と肝臓を中心に症状が出る。
ウィルソン病は3万人に1人が発病すると言われている珍しい病気である。しかし治療をせずに放置してしまうと命に関わる程の臓器障害を引き起こす可能性があるのだ。
ウィルソン病の症状も発症時期も人によって異なる。一般的には5歳～40歳の間に症状が現れ始める。
ウィルソン病の症状は不特定である場合が一般的であるため正確な銅の値が判明するまでは誤診されることも少なくない。
肝臓に何らかの症状が現れるウィルソン病の患者は多い。肝炎（肝臓の炎症）や急性肝不全に至る場合すらある。
それに伴い吐き気、嘔吐、肝臓の真上の腹痛、目や皮膚が黄色くなる（黄疸）等の症状が現れる。
慢性肝疾患や肝硬変などによる合併症を発症してようやく肝臓の症状が現れる場合もある。
その場合の症状としては原因不明の体重減少、膝下や足や腹部のむくみ（浮腫）、腹部に水が溜まる（腹水）などが挙げられる。
ウィルソン病の患者の中には言語障害、筋肉の硬化、震えなどといった中枢神経系の症状を示す人もいる。
中枢神経系に影響を及ぼす症状が出るウィルソン病患者は子供よりも大人に多いのが特徴である。ただし子供であっても症状が出る可能性がゼロという訳ではない。
ウィルソン病による中枢神経系の症状は精神状態に影響するケースもある。不安、抑うつ、精神病、性格や言動の変化さえも引き起こす恐れがあるのだ。
ウィルソン病の症状として特徴的なのがカイザー・フライシャー角膜輪だ。患者の目の角膜の周りに緑、金、茶などの色で現れる環である。
銅が目に蓄積することによって起こる症状である。医師によって行われる細隙灯顕微鏡検査という特殊な目の検査で確認できる。
症状は肝臓、脳、目だけでなく骨、心臓、腎臓など全身に及ぶ可能性がある。
前述の通りウィルソン病は体内の余分な銅を取り除く役割を担う遺伝子の突然変異によって生じる。
遺伝性の病気ではあるものの常染色体劣性遺伝である。つまり突然変異した遺伝子を両親から1つずつ合計2つ受け継がなければ発症しないのだ。
ウィルソン病の保因者とは異常な遺伝子を1つだけ受け継いだ人のことだ。したがって本人がウィルソン病を発症することはないものの子供に遺伝する可能性はある。
医師や医療従事者がウィルソン病の可能性を認めた場合、まず初めに家族の既往歴などについて質問するだろう。
ウィルソン病が原因であると疑われる症状がある場合には血液検査、尿検査、遺伝子検査などが同時に行われる。
ウィルソン病の治療は臓器へのダメージを抑えるため体内にある銅の毒性濃度を下げることに集中する。
第一段階として医師によるペニシラミンやトリエンチンなどのキレート剤の投与により体内の余分な銅を直接的に取り除く。
体内の銅の量が安全な水準にまで下がった後は維持療法として低用量のキレート剤を処方する場合がある。
なんとキレート剤による維持療法を生涯にわたり続けることで再び危険な量の銅が体内に蓄積するのを防ぐことができるのだ。
キレート剤には傷などを治す体の能力を妨害する作用があるため、手術の予定がある人には低用量のキレート剤を処方する医師が多い。
維持療法として銅が腸に吸収されるのを防ぐ亜鉛を用いた方法も存在する。
ウィルソン病と診断されたもののまだ症状が出ていない人に対する治療として亜鉛を使用する医師もいる。亜鉛の副作用としてよく見られるのは胃のむかつきである。
レバー、貝類、チョコレート、きのこ類、ナッツ類などの銅を豊富に含む食品を避けるよう推奨する医師や医療専門家もいる。
また水道水が井戸水なのか銅のパイプを通っているのかを調べるのも良いだろう。もし銅のパイプを通っている場合は水道水に含まれる銅の値を検査しておこう。
水に含まれる銅の濃度が高すぎる場合は浄水器を使って銅を除去してから飲んだ方が良い場合もある。
ウィルソン病は深刻な病気であり合併症を引き起こす可能性がある。しかし早期に発見することで適切な治療を受け副作用を発症するリスクを下げることができるのだ。
提供元：(Cleveland Clinic) (National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)
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ウィルソン病の患者本人であるまたは知人に患者がいない限り恐らくほとんどの人が聞いたこともないだろうほど稀な遺伝性疾患である。主に脳と肝臓に症状が現れやすく、診断が難しいこの病気は放置してしまうと重篤な合併症を引き起こす可能性があるのだ。
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