成功した野生生物種の再導入プログラム -

種の再導入とは、種の個体を、その種が失われた自然分布域の一部に意図的に移送することである。昆虫を含む野生生物はこのプロセスから大きな恩恵を受けており、一部の種は地域的な絶滅の危機から救われ、その後、自立したかなりの数の個体群を再び確立することができた。種の再導入は長期的な取り組みであり、世界中で行われている。しかし、最も慎重に調整されたプログラムでさえ、必ずしも結果をもたらすわけではない。ここでは、ヨーロッパと北米で実施され、成功を収め、野生生物に新たな命を吹き込んだ取り組みを紹介する。

これらの移送事業は正確にどこで行われ、どんな生物が移送されたのか？このギャラリーをクリックして見てみよう。

© Shutterstock

オジロワシ -

北アイルランド、ファーマナ州に生息するオジロワシのつがいは、150年以上ぶりに北アイルランドで繁殖した。この強力な猛禽類を国境の南側とイングランドに再導入する取り組みは続いているが、スコットランドでは成功例の一つで、現在約40のつがいが巣を作っている。

© Shutterstock

アイベックス -

アイベックスのフランス、イタリア、スイスのアルプスへの再導入は、100年以上前の1902年に始まった。ヤギの一種であるこの動物のいくつかは、イタリア北西部のグラン・パラディーゾからスイスの飼育施設に移送され、品種改良された。これにより、現在ヨーロッパの最も高い山岳地帯で繁栄している個体群が生まれた。

© Getty Images

クロハラハムスター -

ヨーロッパハムスターとしても知られるクロハラハムスターは、ユーラシア大陸の大部分の草原やそれに似た生息地に生息しているが、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは絶滅危惧種に指定されている。2014年にフランスで導入されたような飼育下繁殖プログラムでは、農家が収穫しないよう金銭を支払われている畑に毎年500匹のハムスターが放たれており、個体数増加につながっている。

© Shutterstock

オオヤマネコ -

スイスで最後に確認されたオオヤマネコの目撃は1904年だ。同様に、この種は20世紀初頭にフランスアルプスで事実上絶滅した。幸いなことに、この野生ネコの個体数は1970年代に両地域に再導入されて以来劇的に増加しており、現在ではスイスのジュラ山脈だけで少なくとも250頭のオオヤマネコが記録されている。

© Shutterstock

ヨーロッパビーバー -

ヨーロッパビーバーは、20世紀初頭にヨーロッパ大陸で絶滅寸前だった状態から回復し、IUCNによって「軽度懸念」種に指定された。毛皮目的で容赦無く狩猟され、1900年までに野生の個体数はわずか1,200頭にまで減少したが、現在ではヨーロッパのほぼ全ての国に生息している。

© Shutterstock

ヨーロッパバイソン -

20世紀初頭までに、ヨーロッパバイソンは野生では狩猟により絶滅し、最後の一頭は1921年にビャウォヴィエジャの森（現在のベラルーシとポーランドの国境）で射殺された。しかし、ヨーロッパで最も重い野生の陸上動物が驚くべき回復を見せたのはポーランドとベラルーシで、飼育繁殖プログラムによってその数はゆっくりと増加した。しかし、IUCNは依然としてこの種を凖絶滅危惧種に指定している。

© Getty Images

クロハゲワシ -

フランスの再導入計画により、中央高原地帯にクロハゲワシ（クロコンドルとも呼ばれる大型猛禽類）が戻ってきており、これは喜ばしいことだ。

© Getty Images

ヒメヒョウモンチョウ -

1980年、ヒメヒョウモンチョウはチョウの保護団体によって「最も絶滅の危機に瀕しているイギリスのチョウ」とみなされた。その後、1981年のWildlife and Countryside Act （野生生物および田園地帯法）に基づいて保護された。この種の生息地を保護及び管理する取り組みは継続しており、イギリス、エセックス州の森林地帯では個体数が最も増加している。

© Shutterstock

アルプスマーモット -

アルプスマーモットはかつて食用として、またその脂肪を皮膚に塗るとリウマチが緩和されるという奇妙な説のために広く狩猟されていたが、フランスのピレネー地方では事実上絶滅していたが、1948年から1988年の間に400頭が同地方に再導入された。

© Shutterstock

グランビルヒョウモンチョウ -

グランビルヒョウモンチョウは気候変動の影響を受けやすく、この特定の種類のチョウは本来定住性であるため、気温の上昇にうまく適応することができない。イングランドでは、英国生物多様性行動計画により、全国的な保全プログラムの一環として、サマセット州でこのチョウの再導入に成功した。

© Shutterstock

シロエリハゲワシ -

シロエリハゲワシは近縁種であるヨーロッパクロハゲワシと同様に、フランスの中央高地の保護区で発見された。

© Getty Images

モウコノウマ -

IUCNによって絶滅危惧種に指定されているモウコノウマは、もともと中央アジアの草原地帯に生息する希少種である。この動物をウクライナに再導入する取り組みの一環として、ウクライナのアスカニア・ノヴァ保護区で世界最大のモウコノウマ飼育繁殖プログラムが立ち上げられた。少数のモウコノウマが繁殖に成功し、野生に放たれた。しかし、ウクライナで戦争が続いているため、ユネスコ生物園保護区は火災、敵対行為、軍事装備の移動などの危険にさらされている。

© Shutterstock

ヒゲワシ -

ヒゲワシについて語る時、スイスはおそらく真っ先に思い浮かぶ場所ではないだろう。しかし、ヒゲワシ（別名ヒメコンドル）の再導入により、この雄大な猛禽類はスイスアルプスに生息できるようになった。この猛禽類は、フランスアルプスの上空を舞い上がる姿も見ることができる。

© Shutterstock

ゴウザンゴマシジミ -

現在、この大きな青い蝶はイギリスでは絶滅が深刻に危惧されており、ヨーロッパ全体でも同様の状況が懸念されている。しかし、王立昆虫学会が主導するイングランド南西部で実施された再導入プログラムにより、個体数が大幅に増加した。

© Shutterstock

オオタカ -

イギリスにおけるオオタカの個体数増加は、計画的な再導入プログラムと鷹匠の鳥の逃亡によるものである。ヨーロッパの他の地域では、オオタカは一般的猛禽類である。

© Shutterstock

オスプレイ -

スコットランド高地のアバネシー森林保護区、ロック・ガーデン・オスプレイ・センターでは、1959年以来、ほぼ毎年、ミサゴのつがいが巣作りに成功している。1999年には、スコットランドの個体群のつがいが初めて湖水地方のバセンスウェイト湖で繁殖した。この魚食猛禽類が英国に再定着したことは、近年の矢清掃物導入の大きな物語の一つである。

© Getty Images

シルバーウォッシュド・ヒョウモンチョウ -

1970年代から80年代にかけて、イギリスではシルバーウォッシュド・ヒョウモンチョウの個体数が減少傾向にあった。この大型で目立つ模様のチョウは、蝶の保護団体が実施した生息地完治活動によって、特にエセックス州とサセックス州などの馴染みのある地域に再び誘引されてから、個体数はいくらか回復した。

© Shutterstock

アカトビ -

現在ではヨーロッパ全土に広く分布するアカトビだが、かつてはイギリスの南ウェールズに数組のつがいが生息するのみだった。1980年代から90年代初頭にかけて、この赤褐色の猛禽類が徐々に再導入され、この種は繁栄した。実際、ホーク・コンサバシー・トラストによると、アカトビの生存はイギリスにおける最大の保護活動の成功例の一つである。

© Getty Images

キタリス -

キタリスはヨーロッパのほとんどの地域で保護されているが、近年イギリス、アイルランド、イタリアでは個体数が減少している。この現象に対抗するため、北ウェールズのアングルシー島で、外来種の北米産灰色リスを制御的に駆除し、キタリスを本来の松林の生息地に再導入するプロジェクトが行われた。

© Shutterstock

アメリカムラサキバン -

アメリカムラサキバンはスペイン、ポルトガル、フランス南東部、イタリアの湿地帯に生息している。ポルトガルでは、再導入を目的としたポルフィリオ・プロジェクトと呼ばれる取り組みにより、同国中央部のモンデゴ川流域にこの鳥を再導入するまで、その生息数はアルガルヴェ地方に限られていた。

© Getty Images

シュバシコウ -

シュバシコウの驚くべき減少は、19世紀にヨーロッパで起こった産業化と農業の変化にまで遡ることができる。アフリカ・ユーラシア渡り性水鳥の保護に関する協定と呼ばれる汎ヨーロッパの取り組みにより、この優美な鳥はフランス、スウェーデン、オランダ、ベルギー、スイスに再導入され、その数は大幅に増加した。

© Shutterstock

アメリカバイソン -

北米で最も象徴的な動物の一つであるアメリカバイソンは、1870年代以前には推定6,000万頭が生息していたが、1880年代にはほぼ絶滅した。今日、米国内務省は、ネイティブアメリカンの部族やカナダの先住民族を含む他のバイソン保護パートナーと協力して、米国、カナダ、メキシコの一部にある多数の国立公園、野生生物保護区、その他の公有地にバイソンを再導入することに成功している。

© Shutterstock

ベニイロフラミンゴ -

珍しい野生生物再導入プログラムの一つは、1992年にイギリス領ヴァージン諸島のアネガダの塩田にベニイロフラミンゴを再導入したことだ。この取り組みはロードアイランド州に拠点を置く自然保護局のアイデアだった。

© Shutterstock

クロアシイタチ -

IUCNによって絶滅危惧種に指定されている北米原産のクロアシイタチは、品種改良プログラムによって個体数が増加した後、最初に各州の生息地に再導入された。再導入された生息地では、放たれた個体による繁殖が数年にわたって行われている。

© Shutterstock

ルリコンゴインコ -

かつてはトリニダード・トバゴに生息していたルリコンゴインコの個体数は、生息地の破壊や違法なペット取引のための罠猟により、ほぼ壊滅状態に陥った。1990年代以降、同島のポワント・ア・ピア野鳥保護団体は、この見事なオウム科の鳥をゆっくりと本来の生息地であるナリバ湿地に再導入してきた。

© Getty Images

カナダオオヤマネコ -

カナダオオヤマネコは、カナダのほか、アラスカや米国ほんどの北部にも生息している。かつてはコロラド州を本拠地としていたが。1973年までに同州からほぼ姿を消した。1999年には、41頭のオオヤマネコがカナダとアラスカの遠隔地からコロラド州に持ち込まれた。それ以来、その数は毎年増加しており、コロラド公園野生生物局によって注意深く監視されている。

© Shutterstock

ビッグホーン -

200年前、ビックホーンシープの数はおよそ20万頭だった。1950年までに、無秩序な狩猟と生息地の破壊により、その数は激減した。1940年代以降、多くの州政府及び連邦政府機関がビッグホーンの復元に積極的に取り組んでおり、成功の度合いは様々である。特に目立った例は、オレゴン州へのビックホーンの再導入である。

© Shutterstock

オグロプレーリードッグ -

多くの土地所有者から害獣とみなされているオグロプレーリードッグは、米国の一部の地域でその数が著しく減少している。アリゾナ州では、主に組織的な毒殺により、1960年代にこの齧歯動物は事実上根絶された。2008年、アリゾナ州狩猟・魚類局は、アリゾナ州南部へのこの種の再導入に着手した。ニューメキシコ州とメキシコのソノラ州のコロニーから移された500匹の個体は、その後数千匹にまで増加した。

© Shutterstock

エルク -

ケンタッキー州、ペンシルベニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、ノースカロライナ州、テネシー州など、米国の様々な州の国立公園や森林にエルクが再導入されたことで、北米原産の生息地で最大の陸生哺乳類の一つであるこの動物の将来が確保された。

© Shutterstock

フィッシャー -

フィッシャーは、北米、カナダ、米国北部一帯に生息するあまり知られていない哺乳類である。1800年代から毛皮目的で捕獲され、ワシントン州を含む米国のいくつかの地域で絶滅した。これを受け、ワシントン州の地方当局は再導入プログラムを開始し、その成功により、この哺乳類は保護され、捕獲禁止期間が施行された。

© Shutterstock

ハイイロオオカミ -

1995年にイエローストーン国立公園にハイイロオオカミが再導入され、世界中で祝福された。この象徴的な動物は、アイダホ州、ワイオミング州、モンタナ州、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州にも再導入され、モンタナ州、アイダホ州、ワイオミング州の絶滅危惧種のリストから外されるほど十分に回復した。

© Shutterstock

ジャコウウシ -

北極原産のジャコウウシは寒さに強い動物だ。しかし、1900年までに乱獲によりアラスカの個体数は絶滅した。1930年代、このずんぐりとした長毛の動物を絶滅から救うため、他の群れのジャコウウシが北極国立野生生物保護区に移送され、新しい群れが作られた。現在、3,500頭以上のジャコウウシがアラスカを生息地としている。

© Getty Images

カナダカワウソ -

毛皮目的で乱獲されたもう一つの動物、カナダカワウソは、生息域の多くの部分で事実上絶滅している。しかし、ミズーリ州には生息している。この種が再導入され、民間および公共の土地所有者が小川、池、湖を保護する努力をした結果、この力強く流線型のスイマーは繁栄している。

出典: (IUCN) (Butterfly Conservation) (Hawk Conservancy Trust) (National Park Service) (The Conservation Agency)

© Shutterstock