科学者はHIVの治療法を発見したのだろうか？ -

サイエンティフィック・アメリカン誌が最近発表したレポートによると、とあるHIV/エイズ患者が幹細胞移植を受けた後、病気が治ったとのことだ。この危険な治療を受けた後にHIVが治ったと診断されたのは今回が初めてではない。結果は有望に思えるが、40年以上前に初めて特定されたこの潜在的に致命的な病気に対する決定的な治療法はまだない。では、治療には具体的にどのようなものがあり、どのように機能するのだろうか。

クリックして、科学者がどのようにHIV治療法を模索しているか、過去40年間に何が達成されたかを見てみよう。

© Shutterstock

幹細胞移植 -

2024年、サイエンティフィック・アメリカン誌は、「ベルリン患者」として知られるドイツの男性が、幹細胞移植を受けた後にHIVウイルスが除去されたと発表された少なくとも7人目のHIV感染者になったという記事を掲載した。

© Shutterstock

CCR5遺伝子 -

これまでにも、HIV感染していた6人が同様の治療を受けた後、ウイルスが除去されたと診断されている。一人を除く全員が重度の癌の治療のため骨髄移植を受け、CCR5遺伝子の変異を持つドナーから幹細胞を受け取った。この変異はHIVが体内の細胞に侵入するのを阻止することが知られている。

© Shutterstock

「ジュネーブ患者」 -

しかし、ある患者（「ジュネーブ患者」として知られる）は、CCR5変異を持たないドナーから移植を受けており、ウイルスが依然として細胞内に侵入することができた。

© Shutterstock

長期寛解 -

それからほぼ2年経ち、男性が抗レトロウイルス治療（血液中のHIVの量を減らす）をやめてから、医師らは男性の体内にウイルスの痕跡を発見していない。男性のHIVが再発する可能性は常にあるが、研究者らは現在、この「ジュネーブ患者」は長期寛解状態にあると考えている。

© Shutterstock

何が治療につながるのだろうか？ -

これらの結果には期待できるものの、幹細胞移植は依然としてリスクを伴う治療法であり、通常は白血病患者のみ提供される。しかし、治癒につながる可能性のある薬剤や治療法は存在する。

© Shutterstock

TACK（タック） -

これらの中には、HIV -1に感染した細胞を選択的に除去する強力な標的細胞殺傷活性化因子（TACK）分子がある。TACK薬は、HIVに感染したリザーバー細胞（HIVリザーバーとは、HIVに感染しているが、何ヶ月または何年も新しいHIVを生成していない細胞群）を殺すことで治療に貢献することもできる。

© Getty Images

抗レトロウイルス療法 -

HIVと闘うもう一つの方法は、抗レトロウイルス療法（ART）薬を使用することである。これらの薬を服用することで体内のウイルスの量を減らし、長く生産的な生活を送ることができる。しかし、不活性型のウイルスがリザーバー内にまだ存在するため、患者がARTの服用をやめた瞬間に、リザーバー内のウイルスが再び活性化し、エイズを引き起こす可能性がある。

© Shutterstock

治療不要の寛解 -

ART薬を必要とせず、治療なしで寛解した患者もいる。ウイルスの根絶、つまり体内のHIVをすべて排除することも、潜在的な治療法の一つである。また、人のDNAを変更し、他の細胞への侵入を助ける特定のHIV遺伝子を「除去」する遺伝子治療の研究も進んでいる。

© Shutterstock

曝露前予防 -

研究により、曝露前予防法（PrEP）はHIV感染の減少に効果があることがわかっている。米国室病予防管理センター（CDC）によると、処方薬として服用したPrEPは、性行為によるHIV感染リスクを約99％低減する。また、PrEPは注射による薬物使用によるHIV感染リスクも少なくとも74％低減する。

© Shutterstock

「ベルリン患者」 -

すでに指摘されているように、幹細胞移植は有望な結果をもたらしている。2008年に「ベルリン患者」と呼ばれたアメリカ人のティモシー・レイ・ブラウンは、骨髄性白血病とHIVに重複感染していた。彼は2007年に幹細胞移植を受けてHIV/エイズが「治癒」した最初の人物だと考えられている。しかし、歴史的な治療のきっかけとなった白血病が再発し、2020年に亡くなった。では、HIVと闘う真の方法はあるのだろうか？

© Getty Images

国際連合の目標 -

国連は、2030年までに国際的なHIVとエイズの流行を終わらせるという目標を掲げている。この病気の治療法が見つからず40年が経過したが、ウイルスとその仕組みに関する理解は目覚ましい進歩を遂げている。HIVがどのように出現し、人類がどのように対応したか見てみよう。

© Getty Images

20世紀初頭 -

HIV/エイズの歴史は、チンパンジーで発見されたサル免疫不全ウイルスが中央アフリカで初めて人間に侵入した20世紀初頭に始まる。これがHIVのパンデミック形態を引き起こした。

© Public Domain

1959年：ヒトにおけるHIVの最初の症例 -

1959年、コンゴで死亡したバントゥー族の男性から、人における最初のHIV感染例が報告された。この発見はマラリアに関する研究中に起こり、後にこの男性の血液がウイルスに感染していたことが判明した。

© Getty Images

1959年：ニューモシスチス・カリニ肺炎 -

同じく1959年、ニューヨーク市の住民が、エイズと密接な関連があるニューモシスチス・カリニ肺炎で亡くなった。診断は患者の検死中に下された。

© Getty Images

1960代：サルから人間へ -

1960年代に、HIV-2として知られるHIVウイルスの変異体が西アフリカで特定された。HIV-2は、おそらくギニアビサウのスーティーマンガベイザルから人間に感染したと考えられている。

© Shutterstock

1977年：エイズ関連の原因で死亡した最初の女性 -

1977年12月、デンマークの医師兼外科医のグレテ・ラスクが肺炎と思われる病気で亡くなった。彼女はコンゴで1年間働いていた。コペンハーゲンで亡くなった10年後に、彼女が病気の時に受けた血液検査が再分析された。医師は彼女がHIV陽性であることを確認した。グレテ・ラスクはエイズ関連の原因で亡くなった最初の女性として知られている。

© Getty Images

1980年：エイズ流行の最初のアメリカ人患者 -

1980年4月24日、サンフランシスコに住むゲイの男性ケン・ホーンがカポジ肉腫に罹患した。カポジ肉腫は免疫力の低下と関連のある珍しく悪性の癌である。ホーンは11月に死亡した。CDCは遡及的にホーンをエイズ流行のアメリカ人最初の患者として特定した。

© Shutterstock

1981年：エイズに関する最初の科学報告書が発表される -

翌年、CDCはエイズに関する最初の科学的報告書を発表した（1982年にCDCは初めて「エイズ」という用語を使用した）。同時にカポジ肉腫に罹患した健康な若いゲイの男性が増えたと報告された。エイズは同性愛者だけに影響を与えるという誤解が急速に広まり始めた。

© Getty Images

1982年：認識が広まる -

1982年、アメリカの作家で劇作家のラリー・クレイマーは、ゲイ・メンズ・ヘルス・クライシスという慈善団体を設立した。5年後にはエイズ流行の終息を目指す基礎となる、国際的な草の根政治団体であるアクト・アップを共同で設立した。イギリスでは国内でエイズ関連の病気で亡くなった最初の人物として知られるテリー・ヒギンズに敬意を表して、テランス・ヒギンズ・トラストが設立された。

© Getty Images

1983年：HIVとエイズの関連性 -

1983年1月、フランスのウイルス学者フランソワーズ・バレ＝シヌシがヒト免疫不全ウイルスがエイズの原因であると特定したことで、HIV/エイズとの戦いに大きな進展がもたらされた。1984年には、HIVとエイズの関連性を突き止めたとされるアメリカの生物医学研究者ロバート・ギャロが、HIV血液検査の開発に貢献した。

© Getty Images

1984年：病気の媒体 -

また、1984年にCDCは、性行為と血液及び血液製品への曝露がこの病気にかかる可能性の最も高い媒体であると示唆した。

© Shutterstock

1985年：ロック・ハドソンの死 -

ロック・ハドソンは1984年6月5日にHIVと診断されたが、当初は病気を秘密にしていた。1985年10月2日、ハリウッド映画スターの彼は亡くなった。ハドソンは、その診断結果を公表した最初の有名人だった。リベラーチェ、フレディ・マーキュリー、ルドルフ・ヌレエフなどの有名人もこの病気で亡くなった。

© Getty Images

1986年：公衆衛生危機 -

1986年までに、米国では公衆衛生危機が宣言された。他の国々もHIV/エイズの蔓延に警戒していた。米国政府はこの危機に対応して公衆衛生啓発キャンペーンを実施した。このようなポスターが国中に現れ始めた。

© Getty Images

1987年：迷信と誤解 -

1987年、CDCは、ゲイの人だけがエイズを発症するという噂を払拭するために、「誰もがリスクにさらされている」と警告する大規模な公共教育キャンペーンも開始した。さらに、ポスターキャンペーンでは、握手、食器、便座、ドアノブ、またはエイズ患者との日常的な接触によってエイズに感染はしないということを人々に知らせた。

© Getty Images

1987年：エイズメモリアルキルト -

1987年には、エイズメモリアルキルトとして知られる最初のパネルも作成された。今日、この壮大なタペストリーには、エイズで亡くなった110,000人以上の人々に捧げられた50,000枚のパネルがあり、これは歴史上最大のコミュニティーアートプロジェクトである。

© Public Domain

1987年：FDAがAZTを承認 -

1987年3月、米国食品医薬品局（FDA）は、エイズ治療薬として初めてAZTを承認した。8月には、FDAはHIVに対する候補ワクチンの初の人体実験を承認した。

© Getty Images

1988年：WHOが初の世界エイズデーを宣言 -

最初の世界エイズデーは、1988年12月1日に世界保健機関によって宣言された。1991年以来、赤いリボンはエイズに対する認識を表すために使用されている。

© Shutterstock

1990年：ライアン・ホワイトがエイズ関連の病気で死去 -

新しい10年は、エイズと診断された人々に対する偏見がさらに強まる中で始まった。アメリカのティーンエイジャーだったライアン・ホワイトは、エイズと診断された後、学校から授業への出席を禁止され、米国におけるHIV/エイズの象徴となった。彼は汚染された血液による治療後に感染した。ライアン・ホワイトは1990年4月8日に18歳で亡くなった。

© Getty Images

1993年：「フィラデルフィア」プレミア -

1993年12月、「フィラデルフィア」が映画館で初公開された。トム・ハンクス主演のこの映画は、同性愛嫌悪とHIV/エイズを扱った最初の主流映画の一つであり、批評的にも商業的にも成功を収めた。

© NL Beeld

1994年：主な死亡原因 -

1994年11月までに、エイズは25歳から44歳の全アメリカ人の死亡原因の第1位となり、米国で報告されたエイズ症例の総数は50万件を超えた。写真は治療を受けているエイズ患者である。

© Getty Images

2000年：輸血による感染 -

新世紀の変わり目に、世界保健機関は、新たなHIV感染の15〜20％が輸血によるものであると推定した。

© Shutterstock

戦いは続く -

UNAIDSが発表したデータによると、2023年には世界で推定3,990万人がHIVに感染しているとみられている。統計によると、2023年には130万人が新たにHIVに感染したという。

出典：(Scientific American) (ABC News) (aidsmap) (History) (CROI Conference) (UNAIDS) (National Institutes of Health) (ONCURATING) 

© Shutterstock