米国大統領の「核のフットボール」とは何か？ -

アメリカ大統領がどこへ行く時も、黒くて膨らんだブリーフケースを持った男がついて回っているのはなぜか、不思議に思ったことはないだろうか？大統領に付き従っているのは軍の補佐官で、核のフットボールと呼ばれるものを握っている。このカバンは正式には大統領緊急カバンと呼ばれ、米国が核攻撃を受けた場合にのみ開けられる。しかし、この不吉な荷物の背景にはどんな物語があり、どうすれば中身を知ることができるのか？

ギャラリーをクリックして、核のフットボールと呼ばれる奇妙なカバンについて調べてみよう。

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「核のフットボール」の起源 -

1950年代後半、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領は、突然の核攻撃に対する米国の脆弱性について懸念を表明した。

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大統領緊急カバンの登場 -

その後すぐに、大統領が移動するときはいつでも、そのような事態が発生した場合に最高司令官が国防総省や他の軍本部と連絡を取るのに役立つ書類の入ったカバンを携えた軍の補佐官が同行するようになった。このブリーフケースはやがて大統領緊急カバンとして知られるようになった。

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核のフットボールという名前 -

1962年のキューバ危機の際、このカバンは「核のフットボール」というニックネームで呼ばれるようになった。

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ニックネームの由来 -

このニックネームを考案したのは、1961年から1968年まで米国国防長官を務めたロバート・マクナマラだとよく言われる。どうやら、この呼び名は「ドロップキック作戦」というコード名が付けられていた初期の核戦争計画に由来しているようだ。ドロップキックはアメリカンフットボールではあまり使われないプレーだ。

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より良いコミュニケーション -

キューバ危機が進むにつれ、ジョン・F・ケネディ大統領は、昼夜を問わずいつでも米軍と連絡を取るためのはるかに強力な手段の必要性を強調した。

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ケネディは質問した -

ソ連がキューバから核ミサイルを撤去した後、機密解除されたメモが大統領の発言を捕捉した。その中で大統領は「即時核攻撃を開始するには統合作戦室に何と言うべきか？」と問いかけた。また、「私の指示を受けた人物はそれをどのように検証するのか？」と言う質問をした。ケネディ大統領以来、すべての米国大統領は核のフットボールを携えて旅をしてきた。

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核のフットボールが一般公開される -

1960年代後半、リンドン・ジョンソン大統領の任期中に、マスコミは初めて核のフットボールの存在を知った。ホワイトハウスの補佐官ジャック・ヴァレンテは「我々が『黒いカバン』、あるいは『フットボール』と呼んでいるものは、大統領がどこへ行くときでも持っていく」と発言し、そのことを認めた。

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腕の長さ以上離れることはない -

そうして、ホワイトハウスの外に向かうアメリカ合衆国大統領のうつる写真には、必ず核のフットボールが軍の補佐官によって司令官の後ろで運ばれ、腕の長さ以上離れない位置にある様子が写っている。では、このフットボールには何が入っているのだろうか？

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核のフットボールの中には何が入っているのか？ -

大統領の緊急カバンの中に入っていた品々は、大統領の身元を証明するとともに、最高司令官である大統領と国防総省地下の核シェルターである国家軍事指揮センターとのつながりを示すものである。

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黒い手帳 -

また、黒い手帳も入っている。この一連の謎めいた文書は、政策により大統領が行動する必要がある場合に、最高司令官に核兵器発射の選択肢を提供する。

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選択肢とは -

これらの選択肢には、攻撃するターゲット、使用する発射システム、およびアクションを起こすタイミングが含まれている。

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緊急警報システム -

黒い手帳の他に、緊急警報システムの手順を説明した8ページまたは10ページがホチキス止めされたマニラフォルダーも付属している。

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「ビスケット」を取る -

核のフットボールには、核発射認証コードが記載されたカードも入っている。これは「ビスケット」と呼ばれることもある。

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荷物の選択 -

フットボール自体は、金属製のゼロハリバートンのブリーフケースと、重さ約45ポンド（20キログラム）の革製のブリーフケースの両方として説明されている。後者の方がよく写真に撮られるカバンである。

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コミュニケーションの方法 -

大統領の緊急カバンには小さなアンテナが突き出ているもの見られ、何らかの通信機器も入っていることを示唆している。

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国内外で -

大統領は国内外を問わず、常にフットボールを携えている。写真は1987年のロナルド・レーガン大統領とナンシー・レーガン大統領夫人。中央右の軍補佐官が極めて重要なカバンを運んでいる。

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核のフットボールが「赤の広場」に到着 -

1988年、レーガン大統領がミハイル・ゴルバチョフと共にモスクワを散策した際、軍の補佐官が革のストラップで手首に核のフットボールをつけた状態で、赤の広場で2人に同行した。

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大統領夫妻を見守る -

この写真では、ジョージ・W・ブッシュ大統領とローラ・ブッシュ大統領夫人が、エアフォースワンの階段から手を振っており、フットボールを持った大統領の軍事補佐官がそれを見守っている。

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いつも大統領と共に -

ドナルド・トランプ大統領は2017年にラングレーにあるCIA本部をさるところを撮影された。彼の後ろにいる役人の中には、核のフットボールを握りしめているいつもの軍補佐官もいた。

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決して離れない -

ジョー・バイデン大統領はマリーンワンに搭乗しようとする際に敬礼をおこなっており、背景には核のフットボールを運ぶ軍の補佐官がはっきりと見える。

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核のフットボールの複製 -

ネブラスカ州オファット空軍基地の地下倉庫に、これと全く同じ核のフットボールがSTRATCOM（ストラトコム）の核シェルター内に保管されている。そこには全く同じ文書が収められている。

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副大統領のための核のフットボール -

米国の副大統領は、大統領が行動不能になった場合位備えて、独自の核のフットボールを所持している。

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ニアミス -

1月6日の暴動の際、ホワイトハウスを襲撃した暴徒は、当時のマイク・ペンス副大統領のすぐ近くにまで迫った。ペンス副大統領は危害を免れたが、ペンス副大統領にはフットボールを持った補佐官が同行していた。副大統領のフットボールのコードは、大統領が死亡するか無力化されない限り作動しない。しかし、そのカバンが暴徒の手に渡ることの意味は、その場にいた人々に今でも恐怖を与えている。

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フットボールが紛失した日 -

1981年3月30日のロナルド・レーガン大統領暗殺未遂事件後の混乱の中で、大統領緊急カバンが一時的に紛失した。フットボールとその中身は最終的にFBIの管理下に置かれた。

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中国での乱闘 -

2017年、ドナルド・トランプ大統領が中国の習近平国家主席と会談するためい北京を訪問した際、黒い革のカバンを持った米軍補佐官が当初人民大会堂への入場を禁じられたため、中国と米国の当局者は核のフットボールをめぐって小競り合いを起こした。

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フットボールの移送 -

大統領の交代では、次期大統領は核に関する事前レクチャーが終わるまで実際の核コードカードを受け取らない。これは、実際の就任式の直前にホワイトハウスを退任する大統領に会った時にのみ行われる。

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責任の移譲 -

フットボールの一つは、退任する司令官が保管し、就任式の日の午前11時59分59秒まで有効のままだ。その時点以降、元大統領はフットボールへのアクセスを拒否され、コードは自動的に無効になり、フットボールを運んでいた補佐官はワシントンに戻る。

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核のフットボールを起動する -

新大統領は就任前の核に関する事前レクチャーで予備のフットボール1個と、午後12時に有効になるコードが書かれた「ビスケット」を受け取る。

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最高レベルのセキュリティ -

ちなみに、核のフットボールを運ぶ任務を負った軍補佐官たちは、大統領緊急カバンに近づくことを許される前に、国内で最も厳格なセキュリティにより身元調査を受ける。

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核の脅威 -

一方、将来の核攻撃の脅威は依然として非常に現実的である。ウラジミール・プーチン大統領は、ウクライナで大量破壊兵器を使用する可能性について「はったりを言っているわけではない」と強調している。北朝鮮は2022年1月以降、100発以上のミサイル発射実験をおこなっている。核のフットボールが今後すぐに使用される兆候は現在のところ見られていない。

出典: (Time Magazine) (Britannica) (National Security Archive) (Associated Press) (The Guardian)

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