実際に何が起こったのか調べてみよう
指紋といえば犯罪現場や謎解きを思い浮かべるかも知れないが、指紋は生まれる前から人間が持つものだ。では独特な線や起伏について本当に知っているのはどれくらいだろう？そもそもなぜ指紋があるのだろうか？人体の不思議の1つである指紋は単なる身元確認以上のものであり、人間の生態と進化にまつわる驚愕の複雑さを示しているのだ。
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指紋には個性や刑事に利用される以上のものがある。なんと科学者たちは指紋が握力や触覚の発達に一役買っていると考えているのだ。
指紋とは皮膚にある小さな起伏であり、何かに触れればその起伏の上に汗や皮脂による跡が残る。
指先の起伏は妊娠10週前後から胎内で形成され始める。17週目頃の胎児になると独自の模様が出来上がって来る。
人間の皮膚には複数の層があり各層には副層がある。発育過程にある胎児は絶えず各層を伸ばしているため層同士がぶつかり合うことがある。一番下の層が皮膚の他の部分とは異なる速度で成長する際に指紋が形成されると科学者たちは考えている。
指紋の起伏によって触覚の感度が増すという研究結果がある。
ジャーナル・オブ・ニューロサイエンスに掲載された研究によると、指紋の起伏には細かく調整された受容野がありこれが人間の触覚の感度を生み出している可能性があるという。
ある研究によると、指紋は毛包を形成する細胞と同じような形から始まるという。しかし皮膚の構造を形成する遺伝子のほんのわずかな違いにより、細胞が毛包にならずに渦巻きやループ状の起伏を形成するのである。
先天性指紋欠如疾患と呼ばれる珍しい遺伝性疾患では生まれる前に指の起伏が形成されない。先天性指紋欠如疾患の患者の指の腹は完全に平らであるものの他の点では健康である。
指紋の形状の違いについてはイギリスの数学者であるアラン・チューリングが打ち出した理論によって説明できる部分もある。1950年代にチューリングは胎児の細胞で作られる物質は構造の形成を促進するものの、その構造の成長を妨げる反対の物質と作用するという理論を唱えた。
物質同士が相互作用することで、指紋の起伏のように等間隔で繰り返されるパターンが形成されるのだ。
チューリング・パターンは人間の指紋を作り出すだけでなく、シマウマの縞やヒョウの斑点などの自然界に存在する様々な模様を作り出している可能性が高い。
指紋の英語の学術名は「dermatoglyph」（皮膚紋理学）という。ギリシャ語のderma（皮膚）とglyphe（彫り物）が語源である。
科学者は指紋のパターンを渦状紋、蹄状紋、弓状紋に分類している。それぞれの配列と配置によって指紋が唯一無二のものとなるのだ。
指先や爪先には水ぶくれが出来にくいことに気付いているだろうか？研究によると、起伏のおかげで皮膚に伸縮性が生まれ変形しやすくなっているため皮膚が傷つきにくいのだという。
猿やヒト上科は人間と同じような機能を果たす指紋を持つ。しかし人間とは非常に遠い類であるコアラは似たような指紋を持つ唯一の動物である。
年齢と共に肌が変化するのは自然なことである。しかし指先にシワは刻まれない。指先は形成された時から変わらないのだ。
死んでも指紋は残るため遺体の身元確認に非常に便利なのだ。
レンガ職人のような硬くてザラザラした物に触れる作業や、カペシタビンのような化学療法薬により指紋が損なわれたり消えてしまうことすらある。
指紋は一人一人異なるものであり、一卵性双生児であっても同じ指紋のパターンを持つ人は地球上に存在しない。
古代のバビロンでは指紋を使って契約書に捺印することさえあった。つまりハンムラビ王の時代に生きた人々は指紋が固有のものであることを理解していたのである。
指紋による識別が普及する以前の法執行機関は犯罪者を特定するために様々な方法を用いていた。1879年にフランスの人類学者であるアルフォンス・ベルティヨンによって考案された犯罪者識別システムとは写真と身体的特徴の測定値を用いて人物を識別する方法であった。1900年代初頭には指紋識別がベルティヨンのシステムの代わりとなり始めた。
指紋を利用して犯人に有罪判決を下した最初の事件は1892年にアルゼンチンで起きた殺人事件である。警察は血のついた指紋をドア枠から発見し分析して犯人を特定した。
指紋を鑑定する際には専門家は可能な限り多くの一致点を探そうとするが、アメリカでは最低限の基準が定められていない。どの状態であれば合致とするかについての基準を設けている国は多い。2011年の調査によると誤認率は0.1％だったという。
「ミシシッピ川の生活」（1883年）と「まぬけのウィルソン」（1893年）という2冊の著書の中で指紋を使って犯罪者を摘発するという描写が描かれている。しかしアメリカの当局が指紋の照合を導入したのは20世紀初頭になってからのことである。
戦時中の警戒態勢によりFBIは兵士、外国の諜報員、軍事会社、スパイの容疑者などから大量の指紋を収集するようになった。1943年までに7,000万人以上の指紋が収集されたのである。
3歳の少女が殺害されるという衝撃的な事件が起こった1948年にイギリスの警察は4万人以上の男性から指紋を採取した。しかしこれだけの指紋を集めても一致する人物は現れなかった。指紋採取が出来なかった200人の男性を突き止めてやっと犯人が見付かったのである。
アメリカで教職、警察、政府などの職に応募したことがある人の指紋はFBIに登録されている。2015年にFBIは犯罪者と民間人の指紋データベースを一体化させると発表した。
指紋には遺伝的要素も影響するためダウン症などの診断にも利用できる。ダウン症の人で蹄状紋の指紋を持つ人は少なく、渦状紋や弓状紋の指紋であることが多い。
犯罪現場に残された指紋から犯人を特定するなど、指紋は様々な形で法執行機関に利用されている。また殺人事件や暴行事件で死傷した被害者の身元を確認するためにも使用される。
提供元：(Mental Floss) (Reader's Digest)
指紋の役割と事実
指紋にまつわる真実をご存知だろうか？
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指紋といえば犯罪現場や謎解きを思い浮かべるかも知れないが、指紋は生まれる前から人間が持つものだ。では独特な線や起伏について本当に知っているのはどれくらいだろう？そもそもなぜ指紋があるのだろうか？人体の不思議の1つである指紋は単なる身元確認以上のものであり、人間の生態と進化にまつわる驚愕の複雑さを示しているのだ。
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