エドワード8世とシンプソン夫人のスキャンダル -

1936年、エドワード8世は、治世開始からわずが数ヶ月で、アメリカ人の離婚歴のあるウォリス・シンプソンと結婚する意向を示し、憲法上の危機を引き起こした。すでに宮廷儀礼に対する振る舞いと、当時の慣習を無視していることで悪名高かった英国君主は、愛する女性の助けと支援なしには、重い責任を担い、国王としての義務を果たせないと感じた。そのため、退位を決意した。

エドワードはシンプソン婦人と結婚した。2人の結婚は多くの人が注目するスキャンダルとなり、前国王の臣民は、この結婚は道徳的に受け入れられないと宣言し、彼らは王の手を強引に握ったこの女性を中傷した。ヨーロッパに追放されたこの夫婦と英国王室の関係は、その後何十年も緊張したままであった。しかし、2人の愛は消えることはなく、エドワードが1972年に亡くなるまで一緒にいた。

ギャラリーをクリックして、20世紀で最もスキャンダラスで愛の溢れるラブストーリーの一つを振り返ってみよう。

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エドワード8世 (1894–1972) -

エドワード8世、のちのウィンザー公爵エドワード王子は、1894年6月23日、ロンドン郊外のリッチモンドパークにあるホワイトロッジで生まれた。彼は16歳の誕生日にプリンス・オブ・ウェールズに叙せられ、第一次世界大戦中はイギリス軍に従軍した。

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ウォリス・シンプソン (1896–1986) -

1896年6月19日、ペンシルバニア州ブルーリッジサミットでベッシー・ウォリス・ウォーフィールドとして生まれたウォリス・シンプソンは、一人っ子だった。生後5ヶ月の時に父親が亡くなり、生後数年間は母親とともに裕福な親戚の援助に頼っていた。

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王室の有名人 -

1920年代を通じて、エドワードはプリンス・オブ・ウェールズとして、父ジョージ5世の代理として国内外で数多くの機会に出席した。彼の地位、旅行、美貌、そして独身というステータスは、大衆の注目を集めた。実際、人気絶頂期には、彼は当時最も写真に撮られた有名人であり、男性ファッションのトレンドセッターでもあった。

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上流社会 -

ウォリス・シンプソンの叔父は、彼女がメリーランド州で最も学費の高い女子校に通うための費用を支払った。彼女はいつもきちんとした服装をし、懸命に努力し、すぐに上流社会と交流するようになった。1916年に彼女はアメリカ海軍の飛行士、アール・ウィンフィールド・スペンサー・ジュニアと出会い結婚した。2人1927年に離婚したが、その頃の彼女の船舶ブローカーのアーネスト・アルドリッチ・シンプソンと出会っていた。2人は1928年にロンドンで結婚した。

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ウォリス・シンプソンとの出会い -

一方、1920年代から1930年代にかけてのエドワードの女好きと無謀な行動は、王子の父親や英国首相のスタンリー・ボールドウィンをはじめ、王子の側近を心配させた。1930年、エドワードは愛人のファーネス夫人から、まだ結婚していたウォリス・シンプソンを紹介された。この頃、王子はグレート・ウィンザー・パークのカントリーハウス、フォート・ベルヴェデーレに住んでいた。ここで2人の関係は花開き、1934年までに2人は切っても切れない仲になった。

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情事の始まり -

すっかり夢中になった彼はウォリスに金銭と宝石を贈りまくった。1935年、皇太子は彼女とヨーロッパで休暇を過ごし、その休暇の様子は外国の報道陣に報道された。（英国メディアは王室に敬意を表し続け、国内の報道機関ではこの情事は報道されなかった）。

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ジョージ5世の死 -

1936年1月20日、ジョージ5世がサンドリンガムで亡くなり、エドワード8世として王位に就いた。葬儀の際、3人の兄弟と共に右から2番目に写っているのが彼だ。すぐに宮廷や政府関係者の間で、新国王がウォリス・シンプソンと結婚するつもりであることが明らかになった。

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キングとシンプソン夫人 -

1936年10月27日、ウォリス・シンプソンは2番目の夫と離婚することを表明した。これでエドワード8世は愛する人と結婚する自由を得た。しかし、ウォリスと国王の関係は英国ですでに公知となっており、スキャンダルが明らかになると、彼女はマスコミの目を逃れるために南フランスに逃亡した。

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王に手を出すな -

このニュースに対する英国民の反応は予想通り敵対的だった。1936年当時、離婚後の再婚は英国国教会によって反対されており、さらに国民はシンプソンが女王になることも容認しなかった。しかし、国王の退位の噂が広まり始めると、国民の落胆は明らかな怒りに変わった。写真の看板には「国王に手を出すな。退位は革命を意味する」と書かれている。

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国王は退位してはならない -

しかし、ウォリスはフランスで憲法上の危機を避けるために国王との関係を断ち切る意思を示していたにもかかわらず、エドワードは彼女と結婚する決心をしていた。写真の看板には「国王は退位してはならない」と書かれている。

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エドワード8世退位 -

しかし、1936年12月中旬までに、国王はウォリスと結婚したいのであれば退位する以外に選択肢はないと判断した。12月10日に退位文書に署名した。翌日、国民に向けたラジオ放送で国王は「愛する女性の助けと支援なしに、重い責任を担い、国王としての義務を望み通りに果たすことは不可能だと分かりました」と述べた。

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シンプソン夫人との婚約 -

ウォリス・シンプソンは、カルティエのエメラルドの婚約指輪とサファイアとダイヤモンドのブレスレットを身につけて、世界の頂点に立った姿が撮影された。

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結婚と結婚式 -

ウォリス・シンプソンの離婚は1937年5月に成立した。6月3日、ウィンザー公爵の称号を得たエドワードは、フランスのトゥール近郊のカンデ城でウォリスと結婚した。彼女はその後正式にウィンザー公爵夫人として知られるようになったが、夫の「殿下（Royal Highness）」の使用は許されなかった。ウィンザー公爵夫妻と残りの王室メンバーとの関係は、その後何十年も緊張したままだった。

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ハネムーン -

ウィンザー公爵夫妻は、オーストリアのヴァッサーレオンブルク城でカメラの視線を避けながら新婚旅行期間を過ごした。しかし、このカップルはこの時には有名人として話題になり、戦前の公の場に姿を表した彼らの姿、例えばヴェネツィアでの姿は、一般の人々やパパラッチからも注目の的であった。

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フランスの住居 -

ウィンザー公爵夫妻は、フランスのアンティーブ岬にあるヴィラ・ラ・クロエに住んでいた。夫妻はパリの不動産に加えて、1938年5月にこの城を借りた。

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アドルフ・ヒトラーとの出会い -

フランスに住んでいた公爵夫妻は、1937年10月に英国政府の忠告に反してナチスドイツを訪問し、バイエルン州ベルクホーフの別荘でアドルフ・ヒトラーと面会した。第二次世界大戦前、戦中、戦後、公爵夫妻は政府や社会からナチス支持者ではないかと疑われ、この軽率な滞在は、この疑惑を強める結果となった。

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ナチスへの共感？ -

この訪問はドイツのメディアによって大々的に報道され、訪問中、公爵は完全なファシスト敬礼をし、ナチスの高官らと会談した。夫妻はベルヒテスガーデンでヒトラーとそのスタッフらと写っている。

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軍法会議の脅威 -

1939年9月に第二次世界大戦が勃発すると、親ファシストとされたこの夫妻はイギリスへの帰国を命じられた。実際、ウィンストン・チャーチル首相は、英国に帰国しなければ軍法会議にかけると公爵を脅した。夫妻は、公爵の退位後初めてイギリスを訪れた際、サセックス州アッシュダウンフォレスト近くの仮住まいにいるところを撮影された。

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バハマ行き -

1940年、エドワードはバハマ総督に任命された。これはチャーチルが、公爵をヨーロッパとナチスの影響から遠ざけるために画策した措置だった。1942年、ナッソーの政府庁舎の外でウォリスと一緒のエドワードの写真が残っている。

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バハマ総督 -

公爵は総督としての務めを好んでおらず、彼は島々を「三流の英国植民地」と呼んでいた。受け入れ国に対する軽蔑をほとんど隠しもしなかったにもかかわらず、公爵は島々の貧困と闘う努力と、1942年にナッソーで低賃金をめぐる市民の暴動を解決したことで賞賛された。

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軽蔑 -

ウォリス・シンプソンも同様に総督の地位を軽蔑しており、この地位は夫や社交界の名士の地位より劣ると考えていた。

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監視下 -

夫妻がナチスの思想を依然として尊重していること、そして公爵をめぐるドイツの陰謀を連合国が疑ったため、1941年にフロリダ州パームビーチを訪問した際、夫妻は監視下に置かれた（写真）。戦争中、そしてエドワードが1945年に職を辞するまで、夫妻は懸念の対象であり続けた。

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退職と社交 -

戦争が終わると、夫婦はフランスに戻り、残りの人生を実質的に隠居生活で過ごした。手当と政府の援助で生活し、夫婦はパリのブローニュの森のヌイイ＝シュル＝セーヌ側にある、家賃の手頃な家に住んでいた。

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自分達の家 -

1952年、夫妻はパリから23キロ離れたジフ＝シュル＝イヴェットにある、週末を過ごす田舎の別荘、工場を改装した「ル・ムーラン・ド・ラ・チュイルリー」を購入し、改装した。これは夫婦が共同で所有していた唯一の家で、リチャード・バートン、エリザベス・テイラー、セシル・ビートン、マレーネ・ディートリッヒなどの客をもてなした場所である。

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「ア・キングス・ストーリー」 (1965) -

「ア・キングス・ストーリー」は、エドワード8世の誕生から1936年の退位までの生涯を描いたイギリスのドキュメンタリー映画である。1965年に公開され、アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。写真は、1936年に地中海で休暇を過ごしていた夫婦を撮影した映画スチールである。

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ヴォーグ誌の撮影 -

実は、1950年代から1960年代にかけて、このカップルは事実上セレブリティの役割を担い、派手な生活の有名人とみなされていた。彼らは多くのパーティーを主催し、ショッピングや社交旅行でパリとニューヨークを頻繁に行き来していた。この夫婦は、ヴォーグ誌の写真撮影のためにパリの自宅で撮影され、愛犬のパグ犬が足元にいる。

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粋な装い -

1960年代初頭に撮影された、幸せでリラックスした様子のウィンザー公爵。

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威厳 -

同じ時期に撮影されたウィンザー公爵夫人も優雅さと気品を放っている。

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ファッションとセレブリティ -

1967年の別のファッション雑誌の社交界の写真では、2人がル・ムーラン・ド・ラ・チュイルリーの自宅にいるところが写っている。エドワードはベルベットのイブニングジャケット、タータンキルト、アーガイル柄のニーソックス、バックルの靴を身につけており、一方公爵夫人は袖なしのプリント柄のシルクドレスを着ている。2人は大きなクラブチェアに座り、パグ犬を抱きしめている。

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女王の客 -

1960年代半ば、ウィンザー家と英国王室の関係は幾分改善し始めた。1965年、公爵夫妻はエリザベス2世、エドワードの義妹であるケント公爵夫人マリーナ王女、そして妹のヘアウッド伯爵夫人メアリーと会談した。しかし、退位後初めてエドワードが女王の個人的な客として正式に迎えられたのは、1967年にメアリー女王生誕100周年に英国君主から王室に加わるよう招待された時であった。

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王室の集まり -

1967年6月7日、ロンドンのマールボロ・ハウスで行われた記念式典に出席したウィンザー公爵夫妻とエリザベス女王。

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健康状態の悪化 -

1960年代後半までに、エドワード公爵の健康状態は目に見えて悪化した。海外への訪問は以前ほど頻繁ではなくなったが、夫妻は1970年にリチャード・ニクソン大統領の賓客としてワシントンD.C.を訪問した。しかし1971年後半までに、病弱な公爵は咽頭癌と診断された。

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ウィンザー公死去 -

1972年5月18日、エリザベス女王はフランスへの公式訪問中にウィンザー公爵夫妻を訪問した。女王は公爵と15分間個人的に会話を交わした。10日後、ウィンザー公爵エドワード王子は亡くなった。彼の遺体は英国に返還され、ウィンザー城のセントジョージ礼拝堂に安置された。写真は、葬儀の前に棺の周りで静かに見守るグレナディアガーズ（公爵の旧連隊）の将校たちである。

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葬儀 -

1972年6月5日、ウィンザー公爵の葬儀が終わった後、ベールをかぶったウィンザー公爵夫人とともにセントジョージ礼拝堂を後にする女王。ウィンザー公爵夫人は訪問中、バッキンガム宮殿に滞在した。エドワードは、ウィンザーのフロッグモアガーデンにあるヴィクトリア女王とアルバート公の王室霊廟の裏にある王室墓地に埋葬されている。

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公爵夫人の死 -

ウィンザー公爵夫人はエドワードより14年長生きした。最終的には認知症に陥り、最後の数年間は隠遁生活を送り、1986年4月24日にパリで亡くなった。葬儀はウィンザー城のセントジョージ礼拝堂で執り行われ、女王、エディンバラ公、ウェールズ王子と王女を含む王室メンバーが参列した。彼女は夫の横に埋葬されている。

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