メイクアップ・アーティストのファンタスティックなアート
リドリー・スコット監督の1979年のSF傑作「エイリアン」は、観客を恐怖と戦慄で満たす作品だが、どうやらキャスト陣にとってもいくつかのサプライズが用意されていたようだ。
1作目の架空の地球外生命体チェストバスターがジョン・ハートの胸から初めて飛び出した時、そのシーンで何が起こるか知っていたのはジョンだけだったようだ。残りの出演者のリアクションは完全に実際のものだった。
1985年の「グーニーズ」は、世代を代表する子供向けの冒険映画で、不気味な陰謀と宝探しに満ちている。仲間たちが初めて片目のウィリーの海賊船を見つけた時、彼らはその巨大さと素晴らしさに驚かされる。
彼らの目の輝きは演技ではなかった。俳優たちが全長105フィート（32メートル）の巨大な海賊船を見たのはそれが初めてだったのだ。
「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」はホラーのジャンルに革命的な新風を吹き込み、「ファウンド・フッテージ」スタイル（撮影者が行方不明などになったため、埋もれていた映像という設定）の映画制作を強力に推進した。多くの人が知らないのは、残りの制作プロセスもいかに実験的であったかということである。
キャストに与えられたのは、特定の登場人物が他の特定の登場人物と口論するなどと書かれた35ページの脚本概要だけだった。しかし、この映画を非常に恐ろしいものにしているリアルな恐怖は、撮影中ずっとキャストには秘密にされていた。
デヴィッド・フィンチャー監督の1999年の名作には記憶に残るシーンがたくさんあるが、特に際立っているのは、エドワード・ノートン演じる役がブラッド・ピット演じる役に実際にパンチをするシーンである。ピットはノートンが腹を殴るふりをすると思っていたが、フィンチャー監督は密かにノートンに顔面を実際に殴るよう指示していた。
ノートンは体を揺らしてピットの耳を掴み、ピットはフィンチャー監督がカットを指示するまで、シーンを演じ切った。もちろん、その最初のテイクが最終的に採用された。
レザーフェイスはまさにホラー映画で最も恐ろしい悪役の一人だ。初めて彼の人間の皮のマスクを見た時の気持ちを想像すると恐ろしい。しかし、想像する必要はない。なぜなら、スクリーン上でこの恐ろしい殺人鬼にキャストたちが見せたリアクションは、彼らが実際に初めてこの悪役を目にした時のものだからだ。
セットの箱船に登ろうとよじ登る大勢のエキストラに、数十万ガロン（10万ガロンは約400トン）もの水が容赦無くかけられた。結局、3人のエキストラがカメラの前で実際に命を落とし、その他多数のエキストラが重賞を負った。
20世紀最大のホラー映画の一つである1973年の「エクソシスト」は、当時ほとんどの人が見た中で最も恐ろしい映画の一つだった。特に不快なシーンは、悪魔に取り憑かれた少女リーガンがエクソシストの顔に緑色の胆汁を吐きかけるというものだ。
カラス神父を演じた俳優ジェイソン・ミラーは、偽物ではあるがやはり不快な嘔吐液は、お腹にしかかからないと言われていた。なので、緑色の粘液が顔に服かけられた時の彼の顔の嫌悪感と恐怖の表情は、演技の才能以上のものだ！
サスペンスの巨匠、アルフレッド・ヒッチコックは、俳優から自分が望む演技を引き出すために、道徳的に疑問を抱くほどの努力を惜しまないことで悪名高い。彼の数多くの名作映画の一つである1963年の「鳥」で、ヒッチコックは女優のティッピ・ヘドレンに、彼女の演じる役が暴力的に鳥に襲われるシーンで機械仕掛けの鳥を使う予定だと伝えた。しかし、撮影の直前にヒッチコックはヘドレンに本物の鳥を使うように伝えた。
ヘドレンは突然その場に放り込まれ、本物の鳥に襲われ、映画に描かれている恐怖は実際のものである。ヒッチコックは望み通りの映像を手に入れたが、ヘドレンは本物の鳥に襲われ負傷し、入院しなければならなくなった。
20世紀における「ピグマリオン」（ギリシャ神話で、キプロスの王）の再解釈で最も成功した作品の一つである1990年代の「プリティ・ウーマン」では、カリスマ性溢れるジュリア・ロバーツとリチャード・ギアが主演を務めた。
おそらくこの映画で最も象徴的なシーンは、ギアの演じる役がロバーツの演じる役への贈り物として、美しく高価なネックレスの箱を開けるシーンである。ロバーツがネックレスに指を触れた瞬間、ギアは箱をパチンと閉じる。ロバーツの信じられないほど可愛らしい驚きと笑いは、完全に台本に書かれていなかったもので、ギアが箱を閉じるとは思っていなかったのだ。
クエンティン・タランティーノ監督の2015年の西部劇「ヘイトフル・エイト」では、豪華キャスト陣がさまざまな口論や乱闘に巻き込まれる。そうしたシーンの一つには最終的に4万米ドルの費用がかかったが、俳優の一人から実際のリアクションが生まれた。
カート・ラッセルとジェニファー・ジェイソン・リーが出演するシーンで、ラッセルは苛立ちからギターを壊す。ラッセルは知らなかったが、そのギターは小道具ではなく、実際4万米ドルの価値があるアンティークのマーティン・ギターだった。一方、ジェニファー・ジェイソン・リーは高価なギターがセットにあったことを知っており、ラッセルがそれを粉々にした時の彼女の驚きと恐怖の反応は実際のものだった。
みんな大好きタイムトラベル映画シリーズの第3作にして最終作「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」では、マーティ・マクフライ（マイケル・J・フォックス）が西部開拓時代を舞台に活躍する。
クライマックスのシーンでは、マクフライは絞首刑に処されるために絞首台にいる。撮影スタッフは、このシーンを安全かつリアルにするために、フォックスがロープと首の間に手を入れることにした。残念ながら、フォックスは手をしっかりと差し込むことが出来ず、撮影スタッフが演技ではないと気付いて彼を下ろすまで、シーンのほとんどの間、彼は実際に首を絞められていた。
スティーヴン・スピルバーグ監督の1998年の不朽の戦争映画「プライベート・ライアン」は、マット・デイモン演じる経験の浅いライアンという兵を捜すアメリカ陸軍レンジャー部隊の活躍を描いた作品である。
映画に登場するベテラン兵士たちは、ライアンが自分達の時間を無駄にしたことに憤慨している。この憤りは、スピルバーグ監督が「カット」と叫んだ後も完全には消えなかった。俳優たちは全員、厳しい10日間のブートキャンプに送られたが、デイモンは気楽に過ごすだけで良かった。撮影現場に入ると、キャストたちはデイモンの規律の欠如と兵士の振る舞い方に関する知識の欠如に心から腹を立てた。
「ロッキー」シリーズの第4作目、「ロッキー4/炎の友情」（1985年）は、ロッキー・バルボア役のシルヴェスター・スタローンが脚本、監督、主演を務めた。今回、バルボアはリングで対戦相手を殺害した疑いのあるイワン・ドラゴ（ドルフ・ラングレン演じる）と対戦する。どうやら、架空の伝説は真実からそれほどかけ離れていないようだ。
スタローンによると、彼はカメラの前で本物らしく見えるように、象徴的なボクシングシーンの最初の数発のパンチをラングレンに当てるように頼んだという。ラングレンはそれに応じたが、自分の力を過小評価し、胸に当たったパンチでスタローンを誤って病院送りにしてしまったのだ。
出典: (Ranker) (BuzzFeed) (Bored Panda)
みんな大好きクリスマス映画、1988年の「ダイ・ハード」の終盤で、アラン・リックマン演じる邪悪なハンス・グルーバーがナカトミ・プラザの端に指先でつかまるが、恐怖の表情を浮かべながらすぐに落ちて死んでいく。
リックマンの顔に浮かんだのは実際の恐怖だった。技術担当者が彼を落下させるまでに3つ数えると彼は思っていたが、技術担当者は1つ数えて彼を落とした。リックマンは、安全ではあるが恐ろしい落下にまったく心の準備が出来ていなかったのだ。
ウェンディ・トランスを演じた名女優シェリー・デュヴァルは、500日以上に及ぶ撮影中、キューブリック監督に叱責され、きちんと休憩や休息も与えられなかった。デュヴァルは撮影現場で何度も精神崩壊やパニック発作を起こし、その多くはカメラが回っている最中に起こった。キューブリック監督はこれらのテイクを採用し、映画の生々しい雰囲気を作り出したのだ。
スタンリー・キューブリック監督の1980年のホラー映画の傑作は、史上最高かつ最も巧みに作られたホラー映画の一つとしてよく知られている。しかし、その代償は？キューブリック監督は俳優に過度の要求をすることで有名だった。
私たちのお気に入りの映画には、舞台裏で起こった興味深い物語、神話、伝説がある。監督の独特なスタイルや、俳優の演技に対する妥協のない姿勢など、映画をユニークにする何か特別なものは常に存在するのだ。しかし、通常舞台裏で起こるはずのことが時に劇場公開された映像にまで残り、わたしたちも知らず知らずのうちに見ているかもしれない。本当に驚いたり、偶然や恐怖が大画面に映し出され、私たちのお気に入りの映画にほんの少し俳優の実際のリアクションがスパイスとして加わっている例は数えきれないほどある。
実際に映画の本編でそのまま使用された、俳優たちの素のリアクションをいくつか紹介しよう。
史上最高のスラッシャーホラー映画（サイコパスの殺人鬼が集団を刃物などで殺害する内容）の一つである1974年の「悪魔のいけにえ」は、沈黙を守る強靭な殺人鬼の典型を生み出した。
「ノアの箱船」は、「カサブランカ」（1942年）で有名な多作のマイケル・カーティス監督による半無声映画である。勤勉な監督であるカーティスは、悪名高い洪水のシーンをよりリアルなものに仕上げることを決めた。これは今日なら殺人罪で刑務所に入るような行動である。
映画で見せた俳優の実際のリアクション
演技と現実の境界線が曖昧になる
映画 映画
私たちのお気に入りの映画には、舞台裏で起こった興味深い物語、神話、伝説がある。監督の独特なスタイルや、俳優の演技に対する妥協のない姿勢など、映画をユニークにする何か特別なものは常に存在するのだ。しかし、通常舞台裏で起こるはずのことが時に劇場公開された映像にまで残り、わたしたちも知らず知らずのうちに見ているかもしれない。本当に驚いたり、偶然や恐怖が大画面に映し出され、私たちのお気に入りの映画にほんの少し俳優の実際のリアクションがスパイスとして加わっている例は数えきれないほどある。
実際に映画の本編でそのまま使用された、俳優たちの素のリアクションをいくつか紹介しよう。